趣があるたたずまいの社殿が特徴的な滋賀県大津市の小野神社から南へおよそ600メートル、深い竹林が広がる一角にひっそりと佇むのが、小野神社の飛地境内に位置する小野道風神社です。
この神社の祭神は平安中期を代表する書家であり、小野篁の孫にあたるとされている小野道風(894〜966)です。
小野道風は、藤原佐理・藤原行成と並び「三蹟」の一人に数えられ、日本の書の基礎を築いた人物として広く知られています。
若き道風が、柳に飛びつこうと必死に跳ねる蛙の姿に心を打たれ、努力を重ねる決意を固めたという逸話はあまりにも有名です。

参道は竹林の中に続く石段が特徴的で、その先の高みに本殿が建っています。この本殿は、全国的にも珍しい切妻造・平入の様式を持ち、向拝を備えた独特の姿が印象的です。
神社本殿に多く見られる流造とは異なり、切妻造を採用する例は少なく、県内の重要文化財としては、天皇神社本殿、小野神社境内社の篁神社本殿と合わせて三棟しか現存していません。

本殿は桁行三間、梁間二間の規模を持ち、正面には一間の向拝が付けられています。
建立されたのは南北朝期の1341年ということが棟札の写しから判明しており、南北朝時代の建築様式を今に伝える貴重な文化財となっています。
平面構成は前方を外陣、後方を内陣・内々陣の三室に区分した形式で、内部は創建当初の姿をよく残しています。

特に見どころとなるのが、手鋏という箇所に施された手挟の唐草彫刻で、優れた技術で彫り込まれたこの装飾は、南北朝期の彫刻を知る上で極めて貴重であるといえます。
静かな竹林に包まれ、悠久の時を超えて佇む小野道風神社は、本殿の姿とともに、平安の書の巨匠に思いを馳せることができる歴史的価値の高い社です。

びわ湖や比叡山などの豊かな自然に囲まれた土地で新築一戸建て・分譲地をお探しの方は、お気軽に大津市の真栄ハウジングにご相談ください。